Movie Journal

映画と国内外ドラマの鑑賞録です。基本的にネタバレ。

おみおくりの作法 (88pt)

2013年 イギリス/イタリア ドラマ

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引き取り手のない死者を弔い続けていた公務員のお話。


久しぶりにグッとくる作品でした。
舞台はイギリス、物語はゆっくりゆっくり静かに展開していきます。エディ・マーサン演じる主人公ジョン・メイの仕事、見送り続けた人と彼らのそれぞれの人生、そんなものが穏やかに展開されていきます。



我が国日本でも、身寄りのない方・引き取り手のない方の葬儀というのは市役所が行っています。葬儀を行っている、というよりもそれにかかる事務手続きやなんかを市役所が行っていて実際に葬儀を行うのは葬儀会社ですが。参列したことはないのですが葬儀は形式的なもので、お坊さんも来ないというようなことを聞きました。遺骨は遺族が見つからなければお寺の納骨堂に納められるそうです。
ああやって人生を振り返ってもらうことなんてそうそうない、私はそんな現場を少しだけですが知っています。なので、この映画の主人公ジョン・メイがいかに特殊な愛に溢れた人なのかをひしひしと感じました。ここまで故人を偲んで見送るなんてことは、現実的には難しいでしょうからね。劇中では胸クソ野郎みたいに描かれていた彼の上司ですが実際のところはああいう方がほとんどでしょう。

私も子どもがいないし兄弟もいないのでこうやって「身寄りのない人」としてこの世を去る可能性も十分にあります。未婚率が上昇している今の日本なら今後私のような人は増える一方でしょう。でも、もし自分がこの世を去るとき願いが叶うならばジョン・メイのような私の人生を少しでいいから振り返ってくれる方に見送ってもらいたいなぁ、としみじみ思いました。


ラストシーンについては、レビューを読んでみると賛否両論あるようです。見方によっては突然のファンタジー調なので、受け入れがたい人もいるかもしれません。
また、このような形で終わらず誰かと出会い人間らしく生きてそして家族や友だちに見送られる未来を描いて欲しかったという人もいるでしょうね。それはそれできれいにまとめすぎって批判が出そうです。
でも私はこれで良かったかなと思いました。人間らしい人生を選び生きていく未来を描くよりああやって終わった方が。最後はホッとしました。


死について、生について考えてみたい方、静かに進むイギリスの風景に浸かってみたい方におすすめ。